chiji's world peace radio

料理の模倣 思考の訓練 文鳥のモフ

月と蟹

 道尾秀介さんの「月と蟹」を読みました。

月と蟹

月と蟹

 

  小学4年くらいの子が、どんなことを思ったり、感じたりしているのかを疑似体験することが出来る、良い小説だと思いました。

 「子供って意外と大人がついたウソとかを見抜いてるよね」とよく言われてますが、一体どんな感じで子供は気付いたりしてるのか?

 この小説に出てくる慎一という少年は、ある日、母が他の男性といる所をみてしまう。慎一にはそれがいけない事だとかは分からなかったが、なにも言わない母に対して疑心感を抱くようになる。それがやがて嫌悪感に変わり、最後には相手の男性に対して悪意を抱くようになる。

 母の立場としては、父親が早くに亡くなっているので、悪い事をしている感覚はないんだけども、子供から見ると、こういうふうに映るのかと思い、おもしろかった。

 

 子供がトラウマを感じたり、青年期まで記憶に残ったりする事も描かれていた。

 慎一が幼稚園の頃、クレヨンで家族の絵を描くシーンがあった。クレヨン箱を開けると、白がない。母のエプロンは白を使いたかったので、友達のクレヨンを拝借し、それで描いた。慎一はそのまま箱にしまった。メーカーが違うのですぐにバレて、母に怒られた。その時、母に言われた事が今でも覚えている。

「そんなことをして描いてもらっても、嬉しくない」

 ―嬉しくない―

 

 子供を叱る時って難しいですよね。まぁボクには子供いませんが。人からモノを取った事を叱るのは優先的に行いますが、それと合わせて「盗んでまでしてもらっても、わたしはうれしくありません」と言う人もいると思います。

 子供からしてみれば、母の喜ぶ姿を想像して「盗む」ことをするわけですが、それを全て否定される。もちろん子供は「盗む」ことは悪い事、やってはいけないことっていうのは分かってるんですよね。なので盗んだ事を叱られるのは反省するし、心に傷も残らない。

 でも「母の事を想ってしたこと」を否定されると、子供はどう感じるのか。親としては、それを素直に喜べないと思うけど、「盗んだ事」と「母を想ってしたこと」を分けてあげたほうがいいですね。「人のものを盗んだりしてはいけません!でも、この絵を描いてくれて、ありがとうね。嬉しいわ」

 そうすると今度は「悪い事をしないで、母を喜ばせよう!」と考えると思います。なんか教育講座みたいになってしまいましたね(;´∀`)

 それだけ、読んでいて子供に関して考える事が多かったのです。

 

 道尾秀介さんの作品は、子供目線で描いている作品が多いので、子供ってどんな事考えてるんだろう?と思ってる方におススメです。